ハニートラップにご用心
「うーん……」
たくさんのジュエリーが飾られたガラスケースの前で私は眉根を寄せた。
男性に贈るプレゼントなら実用性のあるものがいいとのことで、実用性があり普段から使えるものならネクタイピンがいいんじゃないか、という意見にまとまった。
柊さんが土田さんの好むデザインから何件か店を絞り、ここは四件目のジュエリーショップだった。
何故こんなに悩んでいるのかと言うと、どれも高級ブランドだけあってそこそこに高い。一桁間違えているんじゃないかと何度も値札を見返してはため息をつくの繰り返し。
新卒入社で一年目の私のお財布にはかなり痛い出費になりそうだ。
それでも、土田さんに贈るものに妥協したくない。
私の経済力でもなんとか購入が出来そうなネクタイピンをいくつかに絞って、ふと視線を別のガラスケースに映した。
レディース向けの指輪やピアスの並ぶ列に置かれたネックレス。月をイメージさせる丸い水晶の中に散りばめられた桜の花びらの模様。
それを縁取るように十八金で出来た三日月色輪っかが照明に反射してキラキラと光を放つ。
これ、すごく可愛い……。でも、ちょっと子供っぽいかな。
「桜野、何にするか決めた?」
「ひゃあっ!?」
ネックレスを見るのに集中していた私は、突然背後から柊さんに声をかけられて思わず悲鳴を上げてしまった。
恐る恐る周囲を見ると、驚いたような顔をしている若いカップルや迷惑そうに私を睨みつける婦人もいた。
小さく頭を下げてすみません、と言うとすぐに周囲の人達の興味はジュエリーへと戻っていった。
「えっと、はい。やっぱりこれにしようかなって思って」
私の指さしたネクタイピンのそばに置かれたポップには"十一月の誕生石、トパーズ"と書かれている。
私にはネクタイピンのデザインの善し悪しはわからないし、こういうのは無難に誕生石とかそういうのを選んだ方がいいのではないか、と自分の中で結論に至りそれを指さした。