ハニートラップにご用心
「あ、あの……特別な日でもないのに、もらえません。それに、こういうのは彼女さんにした方が……」
柊さんは土田さんに負けず劣らず非常にモテる。異性からの人気で言えば、もしかしたら彼の方が上かもしれない。
今日のスマートなエスコートを見ていたらかなり女性の扱いには慣れているようだし、そんな男性がわざわざ地味で色気のない私にこんなことをするなんて、気まぐれだとしか思えないんだけど……。
「俺が彼氏になったら受け取ってくれるってこと?」
「……そ、そういう意味ではなくっ」
からかうような声音で言われて、面白がられていると頭で理解していても口調は焦りを隠せていない。
「いいからもらってよ。土田、そういうのあんまり付き合ってない女の子に贈らないでしょ?」
土田さんの恋愛観に踏み込んで聞いたことがないので、わからない。含みのあるその言い方に、思わずチクリと胸が痛んだ。
「でも……」
「桜野がいらないなら捨てるしかないんだけどなー」
尚も食い下がろうとする私を黙らせるように柊さんは口角を上げて意地悪く笑った。
私はうっ、と言葉に詰まらせて視線をあちこちに泳がせたあとに、肩の力を抜いてまた頭を下げた。今日はたくさん頭を下げる日だ。
「……ありがとう、ございます。男の人に何かをプレゼントされたの、初めてです」
本当にもらっていいのかわからずに手のひらにネックレスを載せたままで困った顔で見上げると、柊さんは満足そうに笑って私の頭を撫で回した。
「じゃあ俺が桜野の初めての男だ」
「い、言い方……」
「はは、真っ赤じゃん」
意味深な言い回しをするものだから思わず顔を熱くして睨みつけると、柊さんは目を伏せて笑って、私から少し離れた。
「土田、怒るかな」
柊さんが何かを呟くけどよく聞き取れなかった。
私が聞き返す前に柊さんは片手を上げて心の底から楽しそうに笑って続けた。
「じゃあ、またね。あのヘタレに伝えといて。いつまで待たせてんだって」
待たせるって、何か柊さんと土田さんは約束でもしているんだろうか。
気になるけど、二人のことにあまり口を出すのは良くないなと思い直し、私はいただいたネックレスを握りしめて深く頷いた。