ハニートラップにご用心
「もうすぐクリスマスじゃん。どうすんの?」
「どうって……?」
クリスマスイブを控えた十二月下旬。
大通りから外れた通りまで、街の中は豪華なイルミネーションに染まっていた。今年のクリスマスは数年ぶりに土曜日と重なっているとなり、商店街はいつになくやる気に満ち溢れている。
ここ最近通勤途中で何度もイルミネーションを見ていたからすっかり意識が薄くなっていたが、世間一般ではクリスマスシーズンだった。
年末決済やら仕事納めやらなんやら、とにかく仕事に追われる日々だからそんなこと考えてもいなかった。
「焦らすなぁ、桜野は」
きょとんとした顔の私を見て、柊さんはにやりと笑って私の頬をつついた。
「やっぱ土田と熱い夜を過ごすの?」
そう言うや否や、目の前を一直線に残像が横切って、私は目玉を飛び出させる勢いで驚いて立ち上がった。
何が起きたのかわからないけど、足元で柊さんが頭を押さえてうめき声を上げながら転がっている。
あ、暗殺……柊さんって、命を狙われるほどの重要人物だったの……!?
などと混乱からファンタジーなことを考えていると、柊さんのそばに人が立っていることに気が付いた。
黒い革靴にダークグレーの上品なスーツ。
それが男性のものだということを認識して私が顔を上げるより先に、柊さんが復活したらしく、涙目で顔を上げて自らの後頭部を撫でた。
「俺じゃなきゃ死んでたぞー、土田ー」
「アンタだからぶん殴ったのよ」
柊さんが立ち上がるのと同時に視線を上げると、冊子の形になっているプラスチック製のファイルを掲げた土田さんがそこにいた。