ハニートラップにご用心

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世の中はクリスマスイブ。

街行くカップルが色めき立ち、両親の手を取り子供がはしゃぐ。

オフィスの窓からもその光を確認出来るほどのイルミネーション。人々が仕事を終わらせて思い思いのクリスマスイブを過ごそうとしている時にも、私は帰ることができずに目を回してパソコンの前に座っていた。


時刻は十七時。他の社員は今日の分の仕事を終わらせて既に帰宅している。そんな中で私がなぜこんなに残業しているかというと……先輩達に仕事を押し付けられたからです。

企業体質というか、よく分からないけど一年目の子はこうして先輩達の仕事を押し付……頼まれることが多いらしい。私が先輩になっても後輩にこんなことさせないぞ、と心の中で決意をしながら拳を握った。


「あ。もうダメ、吐く……」


長時間同じ姿勢で滞った血流と凝り固まった眼球に、私は絶賛体調不良を起こしていた。

一度姿勢を変えないと本当に吐きそうなので、滞った血液を全身に循環させるためにゆっくりとした動作で立ち上がる。ふと、目の前が暗くなった。


「え!?な、何……」


貧血かと思って慌てたけど、慌てられるということは貧血ではないだろう。

冷静になると、頭から布を掛けられていることに気が付いてそれを取り払った。私の冬用のコートだ。


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