悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
「そうじゃろう。わしのヤギにはよい草を食べさせているからの。うまい乳からは、うまいバターやチーズができて当然じゃ」


王太子は馬上のグラハムさんたちにもチーズを分け与え、彼らもためらいなく口にして、おいしいですね」と感想を述べた。


なんの危険もなさそうな、和やかな会話と皆の笑顔。それを見て私はやっと緊張と心配を解くことができた。

本当にただの馬貸しのおじいさんなのね。
疑って悪かったわ。

そう思う一方で、疑う気持ちは自分の身を守るために必要なことだとも考えていた。

貴族ならば私のような警戒心を持って当然なのに、どうして王太子殿下は、ビセットさんを信じることができるのかしら……。


馬上で目を瞬かせていると、王太子は私にもひとかけらのチーズを差し出した。


「オリビアもお食べ。とてもおいしいよ」


そっと促すような穏やかな彼の微笑みの前では、『遠慮します』と言えなかった。

一瞬の戸惑いの後に恐る恐るそれを受け取り、口に入れてみる。

すると、不衛生に思えて嫌だったはずなのに、咀嚼してすぐに「おいしいわ。こんなチーズは初めてよ!」と驚き感嘆していた。

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