悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
私、どうしたらいいのかしら。

ドキドキと高鳴る鼓動が苦しくて、私らしくないおかしな気持ちになりそうよ。

苦手なはずの彼なのに、頬を寄せているこの逞しい胸がなぜか心地よくて、もっと速く走らせても構わないとさえ思い始めていた。

そうすれば、ぎゅっとしがみついていられるから……。


馬は山道に入る。

木々が茂っているのは、山の下の方だけで、すぐにゴツゴツとした岩肌がむき出しの、荒涼として寂しい景色になる。

王太子がビセットさんに山越えするようなことを話していたため、暗くなる前に戻ってこられるものなのかと少々心配していたのだが、山の中腹まで行かないうちに彼は馬を止めた。


草が岩の隙間に生えている以外、見るに値するものはなにもない山道で彼は馬を降り、私も降ろされる。

白馬の手綱は、赤茶の馬に跨っているダウナーさんに渡されて、彼は器用に二頭の馬を操り、来た道を引き返そうと馬の向きを変えていた。

グラハムさんが「それでは殿下、夕暮れ時にお迎えに参ります」と言ったのを聞いて、私は動揺する。

まさか、ここからは歩いて山を登れと言われるのかと思ったのだ。

けれどもそうではないようで、彼らが去った後に王太子は「秘密の場所はすぐそこだよ」と、ポケットから出した真鍮の鍵を私に見せた。

< 113 / 307 >

この作品をシェア

pagetop