悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
「そんな顔をしないで。大丈夫。外交はうまくやっている。国内の貴族関係も表立った衝突はない。もしなにかが起きそうなら、剣が交わる前に俺が解決する。だから、笑ってよ。オリビア」


彼の両手の親指が私の口角を押し上げ、無理やり笑顔を作らせようとしてくる。

そんな不躾で親しげな行為は、家族にだってされたことがなく、うろたえるしかできない私を彼は楽しそうに笑った。


「ここは俺にとって、息抜きのための場所。心を楽にしてもらいたいから、君を連れてきたんだよ。あそこへ行こう。いいものを見せてあげよう」


私の腰に手を添えて、彼は奥に立つこじんまりとした建物の方へ移動する。

近づいて見ると少々傷んではいるが、出窓やアーチ型のドアが可愛らしく、技巧を凝らして建てられたものだとわかる。

屋敷の中へ案内されるのだと思っていたけれど、そうではなく、脇に立つ胡桃の木の下で足を止められた。


見上げれば胡桃の実はまだ青く、収穫にはまだふた月ほども早そうだ。

この木のどこが、いいものだと言うのだろう?

不思議に思う私の前で彼は指笛を鳴らし、それから幹に片腕をついた。

するとリスが二匹駆け下りてきて、彼の腕を伝ってその肩にのった。

落ち着きなく肩や腕の上を動き回るリスの、フサフサとした尻尾が首や頬を掠めると「くすぐったい」と彼は笑った。

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