悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
その光景に私は目を丸くしている。

リスは本来、警戒心が強い動物だ。

子供の頃、我が家の庭に住み着いていたリスと遊びたかったのに、近づけばすぐに逃げられて、残念がったことを思い出していた。


随分と人懐っこいリスね。
それとも、彼にだけ懐いているのかしら……。


驚いている私に彼は「餌付けしているからね」と説明してくれて、自分の腰に手を伸ばした。

そこには拳大ほどの布袋が提げられている。


「オリビア、両手を出して」

そう言われて両手を揃えて差し出せば、私の手の上で布袋が逆さにされた。


手のひらには、ヒマワリの種が山盛りになる。

すると二匹のリスが私の腕に跳び移り、頬袋に種を詰め込み始めた。

たちまち頬がパンパンに膨らむが、小さな口から種がこぼれても、まだ詰め込もうとしている欲張りな姿に私は笑う。

尻尾が私の腕を頻りに撫でるから、くすぐったくもあった。


無邪気な声をあげて笑う私を、目を細めて見守る彼は、ヒマワリの種を一粒つまむと、その殻を割って自分の口に放り込んでみせた。


「リスのように、この口いっぱいに種を入れたら、君は俺のことも笑ってくれる?」

おどけた調子でそんなことを聞くから、頬を膨らませた彼を想像して、私は吹き出してしまう。

すると彼も肩を揺らし、ふたり分の明るい笑い声が岩壁に反響していた。

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