悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
こんなにも大声で笑ったのは、何年ぶりかしら。きっと、思い出せないくらい昔のことね……。

『心を楽にしてもらいたい』と彼が望んだ通りになりそうなのを感じていた。

笑ったことがきっかけで、私の心の扉が一時的に開かれたように思う。

鍵をかけて閉じ込めていたはずの、幼い少女のような濁りのない明るさや、素直に喜ぶ心が戻ってきたような気がしていた。


それは童話の世界のように不思議な、この場所のせいだろうか?

ここでは煩わしい貴族関係を心配する必要も、公爵令嬢らしく振る舞う必要もない。

彼と私のふたりきりなのだから。

私が失礼なことをしても、彼は咎めることはなく、むしろ楽しそうな顔をすることだろう。

心がスッと楽になった気がするわ。

ここを出てしまえばきっと、元の私に戻るに違いないけれど……。


その後はウサギと戯れ、彼が取ってくれた甘みの少ない不恰好なリンゴを丸かじりして、ちょろちょろと流れる小川のそばの花畑の中にふたりで座り込む。

赤やピンク、橙のポピーの花を摘んで花冠を作る私を、彼は目の前で寛いだ姿勢で嬉しそうに見守っていた。


「できました。ご覧ください!」と声を弾ませる私に、花冠を受け取った彼は「上手だね」と褒めてくれる。

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