悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
それから私の被っている頭巾を外して、この髪に手を伸ばす。

結わえていた髪紐を解かれて、頭に花冠がのせられた。


「とても愛らしいよ」

その言葉と、弓なりに細められた青い瞳に、頬が熱くなるのはどうしてなのか。

男性に容姿を褒められることなんて、これまでたくさんあったはずなのに、おかしいわ……。


「あ、ありがとうございます。殿下……」

照れくさくなり、目を逸らして小声でお礼を口にすれば、「レオンと呼んで」とまた難易度の高い指示を与えられた。

ますます頬を火照らせる私を、彼は優しく静かな声で諭す。


「恥ずかしがる必要はない。ここには俺たちしかいないのだから。ふたりきりの時には、名前で呼んでほしい」


そう言われても、彼を呼び捨てることに、まだ抵抗感がある。

馬を借りた際にもそうしたように、「様をつけてもよろしいでしょうか?」と困りながら尋ねれば、彼は「駄目」といたずらめかした調子で言ってから、クスリと笑った。


「と言いたいけど、無理強いもできないし、それでいいよ」


私の胸がドキドキと弾むのは、恥ずかしさのせいだけではなさそうだ。

彼を名前で呼ぶことを許される女性は、王族以外ではおそらく私だけ。

その特別感がくすぐったくて、なぜか喜びに似た感情が湧いていた。

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