悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
納得できずにいる私の耳に、深みのある低い声が静かに忍び込む。


「君の心は黒ではない。まだ何色にも染まっていないよ。願わくば、俺の色に染まってほしい。無理やりではなく、こうして触れ合い話をしているうちに、自然とそうなってくれたら……」


彼がなんと言おうとも、私は腹黒い性分だ。それを彼の色に、ということは、白く染め直さねばならない。

無理よ、そんなの。でも……。


迷いが生じていた。彼のように清らかな目で物事を見てみたいという願望が、顔を覗かせたり隠れたりしている。

困らされた私は、レオン様の胸を軽く押して体を離した。

この不思議な空間で、さっきまで無邪気でいられたはずなのに、今はまた表情を消してしまう。

動揺を悟られたくなかったのだ。


「水が飲みたいです」と言ったのは、喉が渇いているからではなく、話題を変えるため。

レオン様は頷いて立ち上がると、私を連れて滝のそばまで進んだ。


小さな滝に架かっていた虹は消えていた。

太陽がだいぶ西に傾いて、夕暮れが近いからだろう。

滝の横の岩壁に小さな亀裂があり、そこから清水が湧いていた。
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