悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
「川の水も飲めるけど、ここから手で汲むと一番綺麗な水が飲める」

彼はそう教えてくれて、片腕で腰を抱えるように支えてくれる。

足元は苔が生えて滑りやすく、岩を踏み外せば小さな滝壺に落ちてしまいそう。

水深は足首ほどと浅くても、濡れるのは嫌なので、「気をつけて」と彼に言われた通り、注意を払って湧き水に手を伸ばした。


両手ですくってひと口飲めば、おいしさに目を丸くする。

井戸水よりずっと口当たりがよく、夏でも冷たくて、三度もすくって喉を潤した。

お礼を言って滝のそばを離れると、「俺も飲むかな」とレオン様は言った。


彼が足を一歩、滝側に踏み出したら……足を滑らせて「わっ!」と驚きの声をあげている。

咄嗟に伸ばした彼の片手が、岩壁の突起を掴んだため、滝壺に足を入れずにすんだけれど、肩や腕、頭までもが滝の水を被り、足を濡らす以上の惨事が起きていた。


「レオン様、大丈夫ですか!?」

「ああ。君に気をつけてと言っておきながら、俺がやってしまったよ」


自嘲気味に笑う彼は、濡れた前髪を掻き上げる。

形のよい額があらわになれば、私は美しさよりも男性的な精悍さを感じていた。

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