悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
一瞬だけ見てしまった彼の半裸は、ほどよい筋肉がついて引き締まっていた。

均整が取れて美しく肌質は滑らかで、その面立ちと同じように麗しいという印象を受けた。

そうだわ。美術品を鑑賞しているような気持ちになればいいのよ……。

そうすれば平常心を保てるのではないかと考えて、顔を覆っている手を外した私だったが、頬の火照りは引かず、弾んだ鼓動も落ち着いてくれそうにない。

やっぱり恥ずかしくて、目を瞑ってしまった私に、「そんなに照れないでよ」と無理なことを言う彼が、隣の草地に腰を下ろした気配がした。


「後ろを向いているから。それで我慢して」

配慮の言葉にそっと目を開ければ……驚いて息をのんだ。

鼓動が大きな音を立てたのは、背中の筋肉美に心を乱されたからではなく、古傷を目にしたためだ。


右の肩甲骨から斜めに腰のあたりまで、刃物で切られたような傷は、赤茶色の線となり盛り上がっている。

すっかり癒えたものであっても痛々しく目に映り、彼の裸を恥ずかしがる気持ちなど、どこかへ消え失せた。


「これは一体、どうなさったんですか!?」と驚きを口にすれば、彼は肩越しに顔だけ振り向いた。

「ん? ああ、傷のことか」と、なんでもないことのように答える。
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