悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
私は今、両手を握りしめ、湧き上がる怒りで冷静さを失わないように耐えている状態である。

やられっぱなしで終わらせたりはしない。

今は有効な反撃の機会を狙っているのだ。


「クレアさんとオリビアさんは、本当によく似ていらっしゃるのね。あなたの美貌に騙される殿方がいたら、気の毒に思いますわ」


言いたいことを出し尽くした様子の侯爵夫人は、口に手の甲をあてて高笑いしている。

ロザンヌ嬢もその隣でクスクスと笑い、取り巻きの婦人たちも館内に笑い声を響かせて楽しそうだ。

そこにフリント伯爵夫人が、画廊商の老婦人を伴い、にこやかな笑顔で近づいてきた。


「皆様、盛り上がっていらっしゃいますわね。とても嬉しく思いますわ。話題はこの彫像ですの?」


鈍感なフリント伯爵夫人は、私たちが芸術談義に花を咲かせているのだと本気で思っていそうな顔をしている。

「え、ええ……」と戸惑いがちに頷いたのは、アクベス侯爵夫人。

私と母を貶めて面白がっていた五人は、水を差された気分でいることだろう。

早く立ち去ってくれと言いたげな目を、フリント伯爵夫人に向けていた。


周囲に視線を配れば、他の招待客が私たちに注目していることに気づく。

集まってなにをしているのかと興味をそそられたようで、ひとりふたりとこちらに足を向けていた。
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