悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
チラリと辺りを確認すれば、アクベス母娘が気まずそうに目配せし合っていて、取り巻きの三人は恥ずかしそうに目を泳がせている。

私がなにを思ってしゃがみ込んでいたのかを知ったことで、いやらしくて下品なのは自分たちの方だったと、ようやく気づいたようだ。


他の参加者たちも集まってきて、像の周りは賑やかになる。

皆しゃがみ込んで下から見上げ、「まぁ、本当ですわ!」と驚きを楽しんでいた。


私を嘲笑した五人はばつの悪そうな顔をして、ゆっくりとこの場を離れようとしているけれど、逃しはしない。

まずは私を『いやらしい』と言ったペラム伯爵家の長男の夫人から反撃を開始する。

彼女を呼び止めて振り向かせると、「ご主人様はお元気になられましたか?」と私は問いかけた。

「主人は、前々から健康ですが……?」と、夫人は怪訝そうに眉を寄せてこっちを見る。

予想通りのその反応に、私は作り笑顔で「よかったですわ!」と声を弾ませた。


「心配しておりましたの。あなたとご結婚される前のご主人様は、わたくしに何度も求婚されていらしたので。父からはっきりと断られた時は、たいそう気落ちしたご様子でしたもの。一年経ってようやく立ち直ることができましたのね」

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