悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
長年王妃に仕える侍女頭に厳しくたしなめられた王女は、私に向き直る。

唇を噛んでいるところを見れば不服そうではあるが、それでも王妃に報告されるよりはマシだと思ったのか、軽く頭を下げた。


「やりすぎました。オリビアさん、申し訳ありません」


それを聞いて目的を遂げた私は頷いて、ほんの少し口角を上げて微笑した。

王女付きの侍女の手からテーブルクロスを取り上げると、糸の端をつまんで自分が編んだ部分をスルスルと解く。

わざと解けやすい編み方をしていたので、それは数秒の作業だった。


そんなに簡単に元に戻せると思っていなかった様子の王女は、目を見開いてから、悔しげに顔をしかめる。

怒りに任せて短絡的に私に詰め寄ったことを、後悔しているような気がした。


「続きを頑張って編んでください。必要であれば上手な編み方をお教えいたしますので、お声をかけてくださいませ」


王女にテーブルクロスを返した私は、会釈してから集団を離れて、ひとり廊下を歩きだす。

相手が王族といえども、媚びへつらうことはしない。

注意深く相手を貶めて、自分が優位に立つ。

これでいいのでしょう? お父様……。

父の教えはしっかりと私の中に根付いていることを再確認していた。

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