悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
ルアンナ王女と一悶着あった日から五日が経つ。
十五時を過ぎても夏の日差しは強く、窓を開けても大して風の吹き込まない室内は暑かった。
ここは王妃の寝室で、私とバッカス夫人が王妃に付き添っている。
就寝には早すぎるこの時間に、ここにいる理由は、王妃がドレスを脱いで涼みたいと言ったためだ。
人前には出られない薄いローブ一枚の姿で長椅子に寝そべる王妃を、私は額に汗して扇であおいでいた。
バッカス夫人は、そのような雑務は命じられず、王妃の向かいの椅子に腰掛けて、話し相手となっている。
実家にいたときの私はあおがれる側だったのに、人が涼むために汗を流しているなんて……。
不満に思っても、王妃の侍女にしてほしいと申し出たのは私の父なのだから、口にできない。
公爵令嬢として扱われるためにここにいるのではないことも重々承知している。
三十分ほど長椅子の横に立ってあおぎ続けていると、私の息は速く浅くなり、頭が霞みがかったようにぼんやりとしてきた。
そこまで苦しめられてからやっと、王妃は私を解放してくれる。
「オリビア、もういいわ。その見苦しい汗だくの姿をなんとかしていらっしゃい。休息を取って、わたしくのお茶の時間には戻ってくるのよ」
「はい。承知いたしました」