悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
自室に戻った私はメイドに手伝わせて冷たいタオルで全身を拭い、オリーブグリーンのドレスに着替えをした。

そうすると流れる汗は止まったが、まだ体には熱がこもっているような気がして、爽やかな心持ちとはいかない。


ベッドの枕元に座って、私を静かに見守っているのは親友のアマーリア。

その小さな体を腕に抱き、「少し涼んできてもいいかしら?」と問いかける。

もちろん人形はなにも答えないけれど、琥珀色の瞳を見つめれば、『そうしていらっしゃい』と言っているような気がして、私は微笑んだ。

その髪をひと撫でし、アマーリアを元の位置に座らせた私は、「待っていてね」と言い置いて暑い部屋を抜け出した。


涼しい場所を求めて南棟の豪奢な螺旋階段を下りていたら、二階の踊り場でよく見知った人物にばったりと出くわす。

四十二歳にしては若々しい肌艶をして、それでいて年齢以上の貫禄を感じさせる美丈夫の紳士。

それはオルドリッジ公爵を名乗る、私の父だ。


「オリビア」と深みのある声で呼び、目を細めた父に近づき、私はスカートをつまんで軽く腰を落とした。


「お父様、お久しぶりにございます」

「ああ。お前を城に送り出した日以来だな。どうだ、うまくやっているか?」

「はい。なにも問題はありません」

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