悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
「いえ、そんなことはございません!」と私は慌てて否定する。


「わたくしはレオン様をお慕いしております。今の口付けは喜ばしいもので、決して嫌だなどとーー」


焦っているためか、それともキスをされたことで動揺し冷静な思考ができないためか、つい直接的な表現で恋心を打ち明けてしまった。

途中でそれに気づいたら、恥ずかしさが急上昇して、言葉を続けられなくなっていた。


どうしたらいいの……。

男性に求婚されたことはあっても、自分から思いを伝えたのは初めての経験である。

どんな顔をしていいのかもわからず、顔を背けるようにして視線を外し、彼の胸を軽く押して体を離そうと試みた。

けれども私の背に回されている腕に力が込められ、離れることを許してもらえない。

「オリビア、俺を見なさい」という穏やかな声の命令により、逸らした視線も戻さねばならなくなった。


いつでも優しく温かく、慈愛に満ちた青い瞳。

その瞳の奥にチラチラと灯るのは、車内に吊るされているランプの明かりかと思ったが、それだけではないことに気づく。

ゾクリとするほど艶かしい、蠱惑的な色が灯されているのだ。

私にキスしたばかりのその唇からは、男性的な色気を含んだ声が響く。

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