悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
王妃やその侍女らに嫌味を言われ、ルアンナ王女には嫌がらせをされたことは報告しない。

言ったところで私に同情する父ではなく、もっとうまく立ち回れと、注意されるだけなのはわかっているからだ。

それで問題ないと言ったわけだが、父は「なにもないのも困るな」と口の端をニヤリとつり上げた。

「え?」と聞き返せば、「目的を忘れたわけではあるまいな」と痛いところを突かれる。


目的とは、王太子に近づき気に入られること。

ただ平和に王妃に仕えるのではなく、王太子の関心を引くような問題を起こせと、父は言いたいようだ。

その腹黒い企みは、階段の踊り場で取り上げるべき話題ではなく、歩き出した父に「ついてきなさい」と命じられた。


涼みに行こうとしていたのに、二階の廊下を西棟へと歩かされ、着いた場所は私が初めて見る執務室だった。


四十八歳になられる国王は、昔から政に熱心ではないと聞く。

有能な臣下である父は長年、国王の最も近くで政務を補佐してきた。

王太子が成長し、国政をうまく司るようになってからは、父は相談役に徹しているそうだが、それでも月に数回は登城している。

そしてこの執務室が、父専用の仕事部屋なのだろう。


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