悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
迷いがあることを、なんと説明すればいいのかと考えていたら、父は小さなため息をついた。


「お前は美しく成長した。もう少し愛想をよくすれば、落とせぬ男はいないだろう。お前を嫁にという数多の申し込みは全て断ったんだ。今さらレオン様は落とせぬと言われても、困るぞ」


レオン様というのは、レオナルドという名の王太子の愛称だ。

子供の頃の呼び名をつい口にしてしまったのは、父が自分の息子のように王太子を気に入っていることの表れだろう。


「はい。お父様、わかっておりますわ……」


父の決め事は絶対で、娘の私は反抗することは悪だと教えられて育った。

だからいつだって、「はい」と頷くしかない。

お母様になら、悩みも相談できるのに……。


母は私を優しく包み込んでくれる人。

しかし、父と同じか、もしかするとそれ以上に忙しい人だから、そばで過ごせる時間は少なく、子供の頃は寂しい思いをしたものだった。

十七歳の私はもう子供じゃないというのに、まだ母親を恋しく思うなんて恥ずかしいわね……。


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