悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
「王太子殿下がこのようなところへお越しになるとは思わず……どのようなご用でしょうか?」


おずおずと尋ねる兵士に、レオン様は人のよい笑顔を向けた。


「お勤めご苦労様。俺の大切な人に城内の隅々を案内しているところなんだ。この塔からはすぐに出ていくから、君は気にしなくていいよ」


「はっ」と畏まり、敬礼してから、兵士はすぐにドアを出ていく。

再びふたりきりに戻った狭い空間で、真面目な顔をしたレオン様が小声で言った。


「おそらく、この扉の鍵だろう」


彼が指差したのは、もう一枚の鉄のドアだ。

私が手渡した鍵をその鍵穴に差し込むと、カチリという音がする。

ニッと笑って「正解」と囁いた彼は、壁にかけられていたランプを手に取り、なるべく音を立てないようにそのドアを開けて、私と一緒に室内に足を踏み入れた。


ランプの火を壁の燭台に移せば、周囲はよく見えるようになる。

六角形をしたこの小部屋は、隠し通路を持つあの部屋を思わせるが、壁はただの石積みで、剣や槍、鎧などの武具が無造作に棚にしまわれている。

暖炉やテーブルセットがあり、天井には天使のフレスコ画まで描かれていた豪華なあの部屋とはまったく異なる様相だ。
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