悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
そのテーブルセットの背景の壁にかけられているのは、大きな額縁に入れられた等身大の肖像画で、そこには若かりし頃の王妃が描かれていた。

王妃の腕に抱かれているのは、青い目と胡桃色の髪をした愛らしい赤子で、おそらくレオン様だろう。


この肖像画には、決定的におかしな点がある。

若い王妃の肩を抱くように、二十五、六と思われる青年が隣に立っていた。

その青年も、レオン様なのだ。


とても美しく写実的に描かれているけれど、幽霊でも見てしまったような心持ちで、私は体を震わせた。

するとレオン様が背中から私を包むように抱きしめてくれる。

長い間使われていない離宮は外とさほど変わらない気温なので、寒がっているのかと心配されたのかもしれない。


温かな胸を背中に感じて、いくらか不気味さが和らいだら、無言でじっと肖像画を見つめていた彼が、「この青年は俺ではない」と低い声で言った。


「え?」

髪色は少し濃いめに描かれているけれど、切れ長の涼しげな青い瞳を含めた麗しき顔の全てが、レオン様そのものなのに……。

そう思いつつ、絵の中の青年の全体を確かめるように観察した私は、別人かもしれない点に気づいた。

絵の彼は枯れ草色の軍服を着ているのだ。

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