悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
レオン様も式典などでは軍服を着用するけれど、濃紺のズボンに白い上着で、肩章や大綬、勲章などで飾られている。

色みが乏しく実戦向けの軍服を着ている青年とは違う。

彼の胸ポケットには三本線の入った階級章がつけられているので、小隊を率いる軍曹だと思われた。

顔は瓜二つなのに、身分が低く貴族ですらない兵士。彼はいったい……。


私を後ろから抱いているレオン様の両腕が、微かに震え始めた。

浅くて速い息遣いが私の耳に聞こえる。


彼のただならぬ様子を感じ取ると、嫌な予感が湧いて、私の鼓動もドクドクと不安げなリズムを刻みだす。


この肖像画について詮索するのはやめた方がいいかもしれない。

知れば、恐ろしい過去に巻き込まれてしまいそうな予感がするから。


なにも見なかったことにして帰りましょう、と言わなければ。

そう思ったのに、「そうか……」と呟いたレオン様が、呻くように肖像画の青年の名を口にしてしまった。


「彼は……ベイルだ」


その名に大きな衝撃を受けて、私は目を見開いた。

ベイルは八歳の頃のレオン様の暗殺を企み、処刑された兵士だ。

その者が王妃の隣に描かれていて、レオン様と顔がそっくりだということは……。


私に回されていた腕が力なく垂れ下がり、その直後にドサリと後ろに音がする。

肩をビクつかせて振り向けば、レオン様が片膝を床につき、うなだれていた。

< 260 / 307 >

この作品をシェア

pagetop