悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
王妃はおもむろに立ち上がると、肖像画の前に移動して、絵の中のベイルにそっと手を触れた。


「この絵は燃やしてしまうべきだったわ。わたくしが犯した罪で、あなたを苦しめたくはなかった。秘密は墓場まで持っていくつもりでいたのに……」


本当にその通りだと、私は王妃の背中を恨めしく見つめる。

同じ貴族女性として、王妃を哀れむ気持ちもあるけれど、こうしてレオン様を傷つけ苦しめていることは許しがたく、徹底的に隠し通してほしかったと怒りを感じる。

それと同時に、愚かな自分も責めていた。

私が王妃の弱みを掴もうなどと企まなければ、この悲しき事実を知らないままでいられたのに……。


レオン様は私の心音を聴いているような姿勢で、瞬きもせずにじっとしている。

彼は今、なにを思うのか……その心痛を慮れば、私の目には涙が溢れ、頬を伝う。

泣いたってどうにもならないのに止めることができず、顎先からポタリと垂れて、彼の髪を濡らした。


「レオン様、わたくしは、この秘密をどこへも漏らさないと誓います。あなたへの愛情も変わりません。ですからーー」


今はつらすぎる真実に打ちひしがれても、どうか立ち直ってほしい。

これを乗り越えて、眩いほどに崇高で気高い存在であり続けてほしいと願っている。

それを伝えようとしたけれど、「許されないことだ」という、彼の低く鋭い声に遮られた。

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