悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
私の腕をほどいて立ち上がったレオン様は、もうふらついてはいなかった。

足にも声にも力が取り戻されているように思う。

けれども、その顔を見上げれば、頬は強張り青い瞳は暗い色をして、私の望む方へ立ち直ったわけではない様子であった。


「このことを父上に……いや、国王陛下に申し上げ、俺は王太子の位を返上する」


きっぱりと言い切ったその声が、静かな離宮を微かに振動させたように感じた。

国を揺るがす秘密を公にしようとしている彼の決意に私は驚き、心臓は縮み上がる。

その後の混乱を想像し、恐怖する中で彼の名を叫べば、その声が王妃と重なった。


慌てた私は立ち上がり、「お待ちください!」とその腕にすがる。

王妃も駆け寄って、必死の形相で彼を止めようとした。


「それだけはやめてちょうだい! わたくしはもうなにもいらない。命さえ惜しまないけれど、どうかあなただけは今のままでーー」

「王家の血を絶やしてはならないでしょう!」


王妃の言葉を遮った声は、彼に似つかわしくない激しい怒気を孕んだものだった。

私は体を震わせて、王妃は両手で顔を覆い、膝から崩れ落ちる。

うなだれる王妃に冷たい視線を落とす彼は、いくらか声を和らげて、これからの行動を指示した。


「母上はどこか遠くへお逃げください。ベイルの死を無駄にしたくなければ。俺は……途中にしている政務の案件を片付けたら、偽られた道を正しき道に戻します」

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