悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
けれども唇が触れ合う寸前でピタリと止まり、思い直したように私から離れていった。

背を向けて歩き出し、ドアを開けて足早に出ていってしまう。


後を追って廊下に飛び出し、「レオン様!」と呼びかけても、もう振り向くことはなく、足を止めようともしてくれない。

彼の姿が階段の下へと消えてしまうと、堰を切ったように涙が溢れ、私は嗚咽を漏らしてへたり込んだ。


レオン様がどんな血を引いていても、私の愛は変わらない。

国外追放されても、幽閉されても、ついていきたいのに。

だからお願いです。どうか私を突き放さないで……。


廊下にうずくまるようにして泣いていたのは、どれくらいの時間なのか。

辺りはいつの間にか薄暗く、夕暮れから夜へと変わろうとしていた。

私の背には厚地のガウンがかけられていることに、今気づく。

これは……王妃のものだろうか?


すぐ横には開け放たれたままの王妃の寝室のドアがあり、部屋の中を見ても誰もいない。

ただ、暖炉には薪が追加されていたようで、まだ燃え尽きずに暖かな空気が廊下まで流れていた。


涙は枯れて、もう私の頬を濡らしていない。

ガウンを落とした私は、大切なものを失った空虚な心を抱えて、ゆらりと立ち上がった。

帰りは抜け道ではなく、離宮の玄関扉を開けて外に出る。

寒さに体を震わせて、紫がかる空を見上げれば、この陰鬱な気分に似合わない、明るく大きな満月が浮かんでいた。
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