悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
王城の巨大な屋敷はすぐそこにあるけれど、ここは木立に囲まれているので、賑やかさも窓辺の光も届かない。


レオン様は仕事をしているのだろうかと、屋敷の方を見て考える。

途中にしている案件を片付けてから正しき道に戻すと言っていたので、苦しい心を抱えながらも、執務机に向かっているのではないかと想像していた。


重たい足取りで、私も屋敷に戻ろうと木立の中を歩く。

すると頭上から突然、なにかが落ちてきて、私は「キャッ!」と声をあげた。

髪を掠めて足元に落ちたのは手のひら大の板切れで、木の上から「すまん! 怪我はないかい?」と男性に問いかけられた。


「ええ。あたってはいません」と答えつつ、すぐ横に立つ木の幹を見れば梯子がかけられていて、声の主が下りてきた。

茶色のマントを羽織り、片手には工具箱のようなものを携えている。

中肉中背で赤茶の癖毛。口髭を蓄えたその顔に……私は目を丸くした。


「国王陛下!? し、失礼いたしました」


無礼な言葉遣いをしてしまったことを詫びて、私は腰を落として頭を下げる。

すると「いや、謝らんでくれ。頭上に注意しながら歩けとは言わないさ」と国王は朗らかに笑って許してくれた。

そして私が問わずとも、木の上にいた理由を教えてくれる。
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