悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
彼は寝間着姿の私を見ないようにと視線を外していて、「夜分にお訪ねして、大変申し訳ございません」とまずは詫びを入れた。


嫁入り前の若い娘の寝室に、男性がやってくるのは確かに失礼である。

けれども、それを承知で訪ねなければならない理由が彼にはあるのだと思い、私の中に緊張が走った。

レオン様になにかあったのかしら……。


「どうなさったのですか?」と身構えて用向きを尋ねた私だったが、反対に質問される。


「王太子殿下は、こちらにお立ち寄りではありませんか?」


その問いかけに面食らってしまう。

なぜこんな夜中にレオン様が、私の部屋にいると思ったのだろう。

執務室を訪ねて、今日は会えないと断られたのは私の方なのに。


「いえ、日中にお会いして以降、お姿を見ておりませんけど……」


「そうですか」と答えたグラハムさんは、苦笑いして、こめかみを指先で掻いている。

「実は晩餐後からレオン様の所在を掴めず……。いえ、城内のどちらかで仕事をされているのだと思うのです。どうぞご心配なく。オリビア嬢をお訪ねしたのは、その……申し上げにくい想像をしてしまったものでして……」


どうやらグラハムさんは、レオン様が婚礼まで待てずに、私を夜這いしに来たかもしれないと疑っていたようだ。

思わず顔を熱くして「レオン様はそのようなことをなさいません!」と反論すれば、グラハムさんが慌てた。

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