悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
「その通りでございます。失礼いたしました」と一礼し、踵を返して、すぐに廊下の奥へと去っていった。


私はドアを閉めてしっかりと施錠する。

ひと息ついて恥ずかしさが消えれば、先ほどの嫌な緊張がぶり返した。

レオン様の所在が掴めないと言っていたけど……。


グラハムさんはおそらく、レオン様の様子がいつもとは少々違っているとは気づいていても、なにについて思い悩んでいるのかまでは知らないのだろう。

私が執務室を訪ねたときも、今も、困ったような顔をしていただけで、深刻さは感じられなかったからだ。

夜這いを心配するほどなのだから、出生の秘密に関しては、レオン様からなにも聞かされていないのだと思う。

グラハムさんは、レオン様が屋敷内のどこかで仕事をしていると考えているようだけど、本当にそうかしら……?


ドア前から離れた私は、落ち着かない心を抱えて、部屋の中をうろうろと歩きだす。

レオン様は今、なにを考えて、なにをしようとしているのか……その答えを得るために、離宮での彼の言動を振り返っていた。


国王に全てを報告して、王太子の位を返上すると言った彼。

私と王妃が止めても、王家の血を絶やしてはならないと頑なに主張していた。

あのときは衝撃を受けた直後だったから、過ちを正すことしか考えられなかったのかもしれないが、執務室にこもって熟考すれば、それによってもたらされる様々な影響について気づくはずだ。

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