悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
確か、この柱が横にスライドするはずだ。

両手を柱にかけて足を踏ん張り、力を込めれば、私の力でもなんとか隠し通路への入口を開けることができた。


テーブル上のランプを手に、私は躊躇せずにその通路に足を踏み入れる。

体を横にしなければ通れない狭い通路を抜ければ、以前トロッコに乗って走り抜けた洞窟に出る。

ランプの光を強めて辺りを照らしたら、レール上にトロッコがないことに気づいた。

レオン様が乗っていったに違いない。

彼が秘密の場所に向かったという推測はあたっているようだ。


乗り物がなければ、歩くしかない。

真っ暗闇のトンネルの中を、私は小走りに奥へと進む。

恐怖心は少しも湧かなかった。

今はレオン様に追いつきたいと思うだけで、彼が生あるうちに会って話さなければと、その一心で走っていた。


トンネルを抜けて、地上の森を駆け、村外れまでやってくるまでに、二時間ほどもかかっただろうか。

空には満月が輝いているから、足元に不自由はない。

けれども、こんなにも走ったのは初めてのことで、足は感覚を失いかけ、息は苦しくてたまらなかった。


気力だけで立っている状態で、私は一軒の民家の戸を叩く。

ここは馬貸しの老人、ビセットさんの家だ。

「お願いします、馬を貸してください!」と大きな声を出せば、その戸はゆっくりと開けられた。

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