イジワル外科医の熱愛ロマンス
身長百六十センチで、一応五センチのヒールを履いている私からでも、彼の顔の位置は悠々十五センチは高い。
その高さから見下ろされると、なかなか圧迫感がある。


「同じ医局員、同僚になるんだぞ。なのに『よろしく』にも返事しねーし。あんまりじゃね? 幼なじみなのにさ」


さっきまで振り撒いていた笑顔は微塵も見せない不機嫌な表情で、彼は更に一歩私に踏み込んでくる。
踊り場の壁に阻まれ、それ以上動けない私の顔の横にトンと手を突くと、わざとらしく背を屈め、顔を覗き込んできた。


「……よろしくお願いします」


私は促された返事だけして、彼の視線から逃げるように首を捻って顔を横に向けた。


彼……祐の言う通り。
私たちは生まれた時からの幼なじみで、知らない仲じゃない。
もちろん、『気がつかなかった』なんて苦しい言い訳はしない。


だけど、少なくともこの一年ちょっとの間、顔を合わせることはなかった。
『久しぶりです』と笑って挨拶するほど、良好な関係というわけじゃない。


顔も見ずに抑揚のない声で返した私に、祐はチッと舌打ちをした。


「顔も見たくないほど俺が嫌いか。……冷たいねえ、婚約までしてた仲なのに」


そこはかとなく嫌味が漂うその言葉には、一瞬ピクッと肩を震わせて反応してしまった。
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