イジワル外科医の熱愛ロマンス
「え~っと……つまり、端折って言うと、婚約破棄してなかったってことですか?」


美奈ちゃんが、パクッとフォークを咥えてから、眉間に皺を刻んで首を傾げた。
それには、先に話を理解した様子の木山先生が、首を横に振る。


「いや、実際週刊誌でもニュースになったし、それに……宝生先生には、別の縁談も持ちかけられたりしたんだろう?」


木山先生が祐に向けた質問で、私もハッと我に返った。


「そ、そうです! 祐、確かどこかの病院のお嬢様と、婚約の話が進んでました!」


思考回路がようやく働き始め、木山先生の言葉を拾って、祐に問い質す。
彼も私にチラリと目を向けた。


「そう言えば、お前にも見られたっけ」

「お相手のご両親から直々に、『うちの娘と』って言われてました」

「あれは氷山の一角。縁談の数ばかり多くて、全部断るのは骨が折れたが、断り文句は考えるまでもなく一つだったしね」


祐は表情も変えずにシレッと言って、箸で摘まんだ麺をズズッと啜り上げた。
もぐもぐと口を動かし、男らしい喉仏を上下させて飲み込んだ後。


「無事に研修医を終えた暁に、結婚式を挙げたい女がいるって」


祐は少し身体を傾けて耳打ちして、きょとんと瞬きを繰り返す私にニヤリと笑う。
思わず真正面から目線を合わせてしまい、私は慌てて顔を俯かせた。
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