イジワル外科医の熱愛ロマンス
「何年もかけて雫さん取り戻したんだから、きっと宝生先生、この先は雫さんにデレッデレですね~!」


美奈ちゃんが冷かすのを横目に、彼は私のブラウスの袖をツンと摘まみ、目線を学食の出入口に向ける。
そして、小さく口だけを動かして見せる。


『退散』


「えっ?」と私が聞き返す前に、彼はガタンと音を立てて椅子から立ち上がっていた。
そして、つられて腰を浮かせた私の肘をグイッと掴み上げる。


「悪い。これ以上吊し上げられたら、羞恥で死ねる」


祐は私にそう耳打ちして、自分の分のトレーを手にした。


「ええっ……? ゆ、祐、あのっ……」

「すみません、ちょっと俺たち、ここで!」


向かい側の二人にペコッと頭を下げて、先にズンズン歩き始める祐を振り返り、私も慌ててトレーを両手で持ち上げた。


「す、すみません、また後でっ……!」


先に席を立つことを二人に謝って、椅子をテーブルに押し戻した。


「行ってらっしゃ~い!」


まだまだ冷やかすような、それでいて温かくて明るい二人の声に送り出され、私は急いで祐の後を追った。
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