寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
◇◇◇
その日の午前中、私は沙智から借りた会社の資料を読み漁っていた。
幸い来客もなく、静かな時間が流れていく。
風見さんは奥の部屋におり、コーヒーを持って行ったときには熱心にパソコンに向かっていた。
風見さんは、大学卒業と同時に事業所のひとつであるニューヨークに十年ほどいて、その間にMBAを取得。向こうで高い評価を得て、敏腕コンサルタントとして活躍していたようだ。
日本に戻ってきて約一ヶ月、既存のクライアントとの関係は今のところ良好に思えた。
「随分と熱心だな」
頭の上から不意に声をかけられて座ったまま飛び上がる。風見さんが近づいてきたことに気づきもしなかった。
「……驚かさないでください」
「驚かしたつもりはない」
風見さんがクスッと笑い、そのまま優しい眼差しを私に注ぎ続ける。
じっと見つめられて、嫌でも頬が熱くなる。
思わず目を逸らすと、風見さんは優しく頬に触れた。
「顔が赤いぞ」