寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「おそらく、自己資本当期純利益率や売上高営業利益率や、さきほどの総資本経常利益率を巧みに取り混ぜて、都合のいい数値を延々と説明されたのでしょう。ですが、それはまったくの幻想です。ROAの数値を見ただけで経営がうまくいっているかどうかがわかりますので、まずはなにをおいてもその数値を社長に報告すべきだと私は考えます」
風見さんが歯に衣着せぬ態度で毅然と申し立てる。
足立社長は唇を噛み締めて腕を組み、「うーん……」と椅子の背もたれに背中を預けた。
そうしてしばらく資料との睨めっこをしていた足立社長が、突然テーブルに身を乗り出す。
「では風見社長、どうしたらROAを向上させることができるんだね?」
「基本的な手法は次の三つです。まず第一に、一坪当たりの投資額を削減すること。第二に……」
風見さんが次々とその手法を挙げていく。
足立社長はときにメモを残し、熱心に聞き入っていた。
手元の資料で言葉を調べながら、私も風見さんの言葉に耳を傾ける。
なんとしてもミヤコの業績を回復させたいという熱意が、痛いほどに伝わってきて、真剣な表情で真摯に向き合う風見さんの横顔に釘づけになった。
いいことだけをあげつらうのとは真逆で、悪い点ははっきり悪いと伝える。
その姿勢は、見ていてとてもかっこよかった。