寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

◇◇◇

仕事終わりに駅から近いスーパーへ寄って、マンションへと急ぐ。
二月に入ったばかりの夜はかなり冷え、ストールを口元まで引き上げた。
今夜は特売で買った牛すじ肉でシチューを作って温まろう。
風見さんはパンがいいかな、それともライスかな。
そんなことを考えながら歩き、マンションまであと少しというところだった。


「水城さん」


いきなりうしろから呼び止められ、驚いて足を止める。
振り返ってみると、そこにはダウンジャケットを着て目深に帽子を被った大柄な男の人が立っていた。

……誰だろう?

心当たりがないものの、その人は確かに私の名前を呼んでいた。


「あの……?」

「クリスタルビルで警備員をしている本田といいます」


本田と名乗った彼が私の様子を窺うように自己紹介をした。
クリスタルビルはオリオンコミュニケーションズが入居しているオフィスビルだ。

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