寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
かくまわれている私ですら恐れてしまうほどの迫力だった。
風見さんが言うや否や、本田さんが踵を返して駆け出したかと思えば、みるみるうちにその背中が小さくなっていく。
「大丈夫だったか?」
深いため息を吐いて振り返った風見さんの表情からは、さっきまでの険しさが消えていた。
「……はい、ありがとうございました」
風見さんはスーパーの袋を拾い上げ、私の肩を引き寄せ歩きだした。
マンションまではあと数十メートルだ。
「寺内さんはどうされたんですか?」
「ここを通りがかったら茜のうしろを妙な男がつけ狙っているのが見えて、急いで降ろしてもらった」
風見さんの乗る車が通ったことにまったく気づかなかったことを思い返す。
きっと、ビーフシチューにはパンかライスか悩んでいたせいだろう。
部屋に着き、キッチンのカウンターに荷物を置くと、風見さんはそこに両手を突いてカウンターを挟んだ私をじっと見据えた。