寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

◇◇◇

その夜のことだった。
晩ごはんのあと片づけをしていると、珍しく部屋のインターフォンが来客を告げて鳴った。

この部屋に訪ねてくる人といったら新聞の勧誘くらい。
またその手の人かなと思いつつ濡れた手をタオルで拭きながらドアスコープを覗くと、そこには年配の男性がひとり立っていた。
やっぱり新聞を取ってくれとかいうことだろう。

それならば居留守を使おう。
ぐいぐい迫られたらつい頷いてしまうから、セールスは私がなによりも苦手とする相手だ。これまでにも三社いっぺんに新聞を取らされた過去がある。

ところが私の思惑を無視して、インターフォンは何度も鳴らされた。

――そうか。
電気が点いている上、明かりが漏れているのだから私が中にいることはバレバレだ。

居留守を使っていることに腹を立てられてドアを蹴られたりしたら、それこそ恐怖。

……よし、絶対に断るんだから……!

頼りないながらも気持ちを強く持ち、やむを得ずドアを開けた。
すると、そこに立っていたのは白髪交じりでやけに小柄な男性だった。

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