寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

「夜分に恐れ入ります」


長い眉毛にも白いものが混じり、目尻にはくっきりと皺が刻まれている。六十歳は超えているだろう。
私の目線の高さからすると、身長はおそらく百五十五センチ程度。
黒いスーツに身を包み、同じく黒い蝶ネクタイをしている。
新聞の勧誘には見えない。

それじゃいったい……?


「あの……」


どんな用件かといったニュアンスで言葉を発すると、初老の男性は「お迎えにあがりました」と意味不明なことを言い放った。


「……お迎え?」


車を頼んだ覚えはない。
なんのことかと首を大きく捻る。


「理玖様からくれぐれもよろしくと仰せつかっております」

「“りく様”?」


私の頭の中にクエスチョンマークが飛び交う。

< 17 / 318 >

この作品をシェア

pagetop