寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「夜分に恐れ入ります」
長い眉毛にも白いものが混じり、目尻にはくっきりと皺が刻まれている。六十歳は超えているだろう。
私の目線の高さからすると、身長はおそらく百五十五センチ程度。
黒いスーツに身を包み、同じく黒い蝶ネクタイをしている。
新聞の勧誘には見えない。
それじゃいったい……?
「あの……」
どんな用件かといったニュアンスで言葉を発すると、初老の男性は「お迎えにあがりました」と意味不明なことを言い放った。
「……お迎え?」
車を頼んだ覚えはない。
なんのことかと首を大きく捻る。
「理玖様からくれぐれもよろしくと仰せつかっております」
「“りく様”?」
私の頭の中にクエスチョンマークが飛び交う。