寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「あんな高級なお店に連れて行っていただいて申し訳ないです。ごちそうさまでした」
緊張のせいで、味は最後のケーキしか覚えていないけれど。
「慣れていない感じが、なかなか新鮮だったな」
「……私は琢磨さんがお付き合いされてきた女性には遠く及びませんので」
だからもうこれ以上、からかうのはやめにしてほしいことを暗に示した。
「兄貴が気に入る女性がどんなものなのか、興味があったんだよね」
「ですから、社長とはなんでもないんです」
どうも琢磨さんは私が否定すると余計に怪しんでしまうようで、「はいはい」と適当に返されてしまった。
琢磨さんは風見さんと私の仲を疑っていて、大事な兄が悪い女にたぶらかされては大変だと心配したのかもしれない。
なんせ有名な企業のトップなのだ。お金狙いの悪女だと、弟としても困ってしまうのだろう。
やたらと私を構うのはそういうわけだったのかと、やっと納得できる理由を見つけられた気がする。