寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「琢磨さんは勘違いをされています。それに私は悪女じゃありませんのでご心配にお呼びません」
「悪女?」
「あ、いえ、それはこちらの話で……」
琢磨さんはクスクスと声を立てて笑った。
「兄貴に伝えて。自分の秘書に手を付けるなんて職権乱用だぞって」
「手を付けるってなんですか」
「わかってるくせに聞くな」
琢磨さんの横顔に意地悪な笑みが浮かぶ。
もうなにを言っても無駄な気がして、私は顔を窓の外へ向けて逃げた。
口をつぐんだまま座り心地のいいシートに体を預けていると、窓の外が見知った景色に移り変わった。この信号を過ぎたら、もうすぐマンションだ。
「このへんでいいです」
「え? ここ? 兄貴のマンションの近くだな」
「そうなんですか?」
惚けて返す。