寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

「琢磨さんは勘違いをされています。それに私は悪女じゃありませんのでご心配にお呼びません」

「悪女?」

「あ、いえ、それはこちらの話で……」


琢磨さんはクスクスと声を立てて笑った。


「兄貴に伝えて。自分の秘書に手を付けるなんて職権乱用だぞって」

「手を付けるってなんですか」

「わかってるくせに聞くな」


琢磨さんの横顔に意地悪な笑みが浮かぶ。
もうなにを言っても無駄な気がして、私は顔を窓の外へ向けて逃げた。

口をつぐんだまま座り心地のいいシートに体を預けていると、窓の外が見知った景色に移り変わった。この信号を過ぎたら、もうすぐマンションだ。


「このへんでいいです」

「え? ここ? 兄貴のマンションの近くだな」

「そうなんですか?」


惚けて返す。

< 180 / 318 >

この作品をシェア

pagetop