寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「まさか一緒に住んでるとか」
「――違います」
強く否定してみたけれど、琢磨さんの目は笑っている。
車が静かに止まり、私は助手席のドアを開けて降り立った。
すぐに走り出すかと思いきや琢磨さんまで降り、なんとその手にはピンクのバラの花束を抱えていた。
甘い香りがしていたことには気づいたけれど、てっきりカーフレグランスだと思っていて、後部座席にバラがあるとは思いもしなかった。
「見映えがいいから歳の数より多めにしておいた。誕生日おめでとう」
「いえ、でも……」
差し出された花束を受け取るのを躊躇う。
高級イタリアンをごちそうになった上、バラのプレゼントなんてすんなり手が出なくて当然だ。
「突き返されたらゴミ箱行き確定」
「えっ、そんな……」
「俺が花を飾るように見える? しかも自分で買ったものなんか」
それはそうだけど……。