寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

「誰か別の女性にあげるとか……」

「相手にそんな失礼な真似ができると思う?」


琢磨さんの言葉にぐっと喉が詰まる。

私がもらうか、ゴミ箱行きか……。

バラと琢磨さんを交互に見る。

……仕方ないよね。
こんなに綺麗な花を捨てさせるわけにはいかないから。花に罪はない。


「ありがとうございます……」


おずおずと手を伸ばし、琢磨さんから花束を受け取った。


「いい子だ」


琢磨さんは白い歯を見せて笑った次の瞬間、私の腕を引き寄せた。
かすめとるように唇が触れて離れる。

突然のことに私が反応できずにいると、彼は「それじゃ、おやすみ」と車に乗り込み走り去っていった。

入れ違いで黒塗りの車が私の前に停車して、それが風見さんの乗る車だったものだから体験したこともないほど心臓が飛び上がる。

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