寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
後部座席のドアが空き、彼が悠然と降り立った。
……今のキス、見られてないよね?
耳の奥で鼓動がドクドクと響く。
バラをどうしようかと思ったものの、突然のことでどうすることもできない。
背中に隠したところでたかが知れている。
「……おかえりなさい」
「どうしてこの車で帰らなかったんだ。今の車、琢磨じゃないか?」
「あ……はい、そうです」
車の認識もできていたみたいだ。
「こんな時間までふたりで?」
「お食事に誘われて」
風見さんはほんの一瞬眉をひそめ、バラに目線が下りる。
「そのバラは?」
「これは……誕生日のプレゼントだそうです」
「……誕生日?」
「今日は私の誕生日で……」