寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
風見さんが息を飲んだような気配がした。
そしてその息を今度は短く吐き出す。
「どうして言わなかったんだ」
そう言われるとは思いもせず、「えっ」と言ったまま固まる。
私の誕生日なんて、風見さんが気にかけるような日じゃない。
「とりあえず乗って」
「でもすぐですから」
歩いてそれほどかかる距離じゃない。
「いいからおいで」
背中を押されて後部座席へと乗せられてほんの一分、彼のマンションの前に着く。
寺内さんに「おやすみなさい」と挨拶をし、風見さんのあとを追った。
部屋に入り、ネクタイを緩めながら彼がソファに深く腰を下ろす。
漂ってくるのは、ただならぬ重い空気だった。
「お茶でも入れましょうか……?」
明るい口調で言ってみたものの、風見さんは「いや、いい」と私を手招きする。