寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

それが真顔だったものだから一瞬躊躇したものの、コートを脱ぎ、バラとバッグをダイニングテーブルに置いて風見さんの隣へ座った。


「誕生日のこと、どうして言わなかった?」

「わざわざ言うことでもないと思って……」

「恋人の誕生日を別の男に祝われて、俺がどうも思わないと思っているのか」


そうは思わない。でも私たちは普通の恋人とは違うから、どうしても遠慮してしまう部分があるのも事実。
これ以上、風見さんを好きになりたくない。

いつも冷静な風見さんの言葉の端々に棘を感じる。


「琢磨には言えて、俺には言えなかったってことか」

「違うんです……! 琢磨さんは私の履歴書を見たことがあって、誕生日を覚えていたみたいで……」

「おかげでなにも用意してない」

「プレゼントは必要ないです。ここへ置いてもらえるだけでプレゼントも同然ですから」


風見さんのそばにいられれば、それで十分。
できることなら、ずっとここに……。

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