寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
「俺の見間違えじゃなければ、茜はさっき琢磨とキスしていたが、実際のところはどうなんだ」
「――っ」
やっぱり見られていたんだ……!
私が絶句していると、風見さんの目がみるみるうちに険しくなっていく。
あれは琢磨さんに無理やりされたと言ったところで、風見さんには言い訳にしか聞こえないだろう。
風見さんの言うとおりだ。
私には本当に隙ばかり。
だからいいようにつけ込まれてあんなことに……。
「弟は“琢磨さん”で、俺は“風見さん”か」
私では受け止めきれないほど強い視線が突き刺さる。
琢磨さんとのキスを目撃されたショックで、胸が詰まるように苦しい。目がじわじわと熱くなり鼻の奥がツンとしてきたかと思ったら、瞬きをした弾みに涙が零れてしまった。
「……俺が怖いか」
風見さんの瞳が揺れる。