寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~
そうじゃない、風見さんが怖いんじゃない。
こんなにも大きくなってしまった風見さんへの想いが苦しいだけ。
「ごめん、怖がらないでくれ」
ふと風見さんが私を抱きしめ、優しい重みが体にかかる。
そうされると、罪悪感で余計に涙が溢れてしまう。
「茜、俺を怖がらないで……」
切羽詰まったように風見さんが訴える。
いつも自信に満ち溢れて人を圧するような空気感を持つ人なのに、不意に見せられた弱い一面に心が乱される。
「違うんです……私、本当に隙だらけで……。だからさっきも琢磨さんに……」
蘇ったシーンをかき消すように頭を振るけれど、そうしたところで風見さんに見られた事実も私がキスをされた事実も消せやしない。
風見さんの唇が瞼に落ちる。こめかみに伝った涙を辿るようにキスをしたあと、私の唇へと到達する。労わるかのように優しく唇を食みながら、風見さんは私を抱きしめた。