寵愛命令~強引社長はウブな秘書を所望する~

「琢磨にされたことは、もう忘れろ。……俺が悪かった」

「風見さんはなにも――」


悪くないという言葉は風見さんに飲み込まれた。
さっきと打って変わった荒々しいキスが私の心ごと奪っていく。

唇が離れた隙を突いて「理玖さん」と名前を呼んだそのとき、愛しさが増した気がした。
彼は驚いたように私を見つめ、それから目の端で微笑んだ。

もしかしたら理玖さんは、私が琢磨さんを好きになっては困るのかもしれない。
それは私のことを好きだからということではなくて、大事な弟の琢磨さんの相手が私ではあまりにも不釣り合いだから。
それを防ぐために私をこうして激しく求めるのかも。

理玖さんも琢磨さんと同じというわけだ。
それぞれに兄弟を思いやって、私を遠ざけようとする。

大きく膨らんだ“好き”という言葉は絶対に言えない。
口にしたが最後、きっと理玖さんのそばにいられなくなるだろう。

苦しい想いにふたをして、彼のキスに専念した。

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